FE考察~マルスとハーディンと炎の紋章
今回は何故マルスにファイアーエムブレムが託されたのかについて考察する。
【そもそもファイアーエムブレムとは】
ゲーム中ではファイアーエムブレムは「アカネイア王家の代理として世界を救う覇者の証」とされる。マルス以外に紋章を託された人物はアンリの時代においてアルテミス王女に紋章を託されて、解放軍を組織して後のアカネイア国王になったカルタス伯がいる。
「覇者」の意味について調べると、「春秋時代に入って周の王の権威が低下し,諸侯を統合する力がなくなったので,代って諸侯を集めて盟約を結び指導者となったものをいうが,やがて武力によって諸侯を支配する者をさすようになった。」とある。ファイアーエエムブレムの新作では弱体化した王家に代わって諸侯戦力を結集してドルーアに当たったとする意味での覇者が相当する。ニーナ王女の名の下に同盟軍を組織しドルーアからの解放を進めたマルスの活動はまさに「覇者」の仕事である。
【似て非なる、解放戦争と暗黒戦争】
暗黒戦争の大逆転劇の要因のひとつはかつての解放戦争の大逆転劇を再現する要素が揃っており、大陸中の全ての人はそれを望む望まぬに限らず大逆転劇の再現の予感をしたこと。そして実際その通りになった。これはハーディンやニーナ、マルスが狙って起こしたことではないかと考える。条件が揃ったのは偶然であってもそれらを巧みに組み合わせて最大限利用したアイデアと宣伝戦略は間違いなく彼らの実力である。
そしてあまり注目されないが、暗黒戦争は必ずしも解放戦争の再現ではない。似て非なる部分が多い。アルテミスの時代とニーナの時代では事情も違うので完全な再現は不可能なのは当然だしその必要もないのだが、似て非なる部分にこそ重要な事象が隠されているのではと考える。
同じ部分はというと、アリティアの若者がファルシオンで地竜王メディウスを打倒した点、アカネイアが滅びかけたが最後の王女が旗頭になって大逆転した点、王女は英雄にファイアーエムブレムを託して全軍の指揮を任せた、王女は英雄の一人を新しい王として迎え入れた。
また英雄の再来という点ではマルス=アンリ、ニーナ=アルテミス、ハーディン=カルタス伯が物語の再来を望む人々の希望に応えた。
似て非なる部分は、竜殺しの英雄と王女の恋物語は再現されなかったこと。正確には望まれていたのは王女の“悲恋”の物語。これには敵の将軍カミュがあてがわれて悲恋物語のクオリティは高まった。
そして、ファイアーエムブレムを託されたのはカルタスの再来ハーディンではなく、アンリの再来マルスだったこと。これが今回の主題になる。
【何故ハーディンではないのか】
ファイアーエムブレムを託されたのはハーディンでなくマルスだったのは何故だろう。解放戦争の再来を狙うならハーディンの方が相応しいのではないか。長くニーナを守り続け、のちに皇帝になるぐらいだから実力や実績的には申し分がない。マルスの方はタリスからオレルアンまで連戦連勝で軍才は示し始めているもののまだ年若く実績不足は否めない。
となるとハーディンの方に(名目上であっても)同盟軍の総大将を任せられない理由があったのではないか。考えられるのはハーディンに足りないのはアカネイア国内での格だろう。カルタス伯はアカネイアの最有力貴族のカルタス家なので家格的には申し分ない。対してハーディンは辺境の属国オレルアン王弟でしかない。カルタス家をルーツに持つとはいえ傍系に過ぎない。
ハーディンはアカネイアの貴族からはかなり見下されていたのではないか。ニーナに迎えられ王となったハーディンに対しての感情はより悪くなる。ハーディン王に対して表立って反抗しなくとも決して協力的ではなかった。それゆえにハーディンの政策実行はより強引になり対立は深まる。ハーディンに追い込まれた貴族はファイアーエムブレムを持ち出し、マルスにハーディンを倒させようとすることになる。
対してマルスの方は属国アリティアの王子に過ぎない。この点ではハーディンと大差はないはずだ。オレルアンに馳せ参じた時点ではまだマルスの巧みな政治工作能力は発揮されてはいない。そうなると、ハーディンとマルスの差は何だろう。
ここで仮説を立てる。『マルスの家格はハーディンよりずっと高い』のではないか。
まだ実績のない若きマルスがハーディンを差し置いてファイアーエムブレムを託され(名目上ではあっても)同盟軍の総大将に任命され、誰からも文句を言われないのは単純に家格の差ではないかと思われる。
そしてこれはゲーム中でも全く示されていない完全な筆者の仮説だが、マルスの父コーネリアスではなく母親の方の血筋が聖王家の流れを汲んでいるのではないか。
全く根拠が無いわけではなく、まずマルスがハーディンを差し置いてファイアーエムブレムを託されていること(=ニーナの代理として同盟軍の総大将になるに相応しいとされている)、ニーナの婿候補になった(ボア談)、マルスの母リーザはドルーアのモーゼスに処刑されていること。
特に3つ目が重要で、リーザはドルーアにとって処刑する必要のある人物だということ。もしリーザが聖王家の縁者ならアカネイア聖王家を根絶やしにするドルーアの方針とも合致している。エリスが見逃されているのはマルスとは母が違うか、ガーネフの強い要望からか。
コーネリアスの方も本国アリティアを手薄にしてまでアカネイア救援に向かったのはコーネリアスにとってはそれだけ優先度が高かったからなのかもしれない。またアカネイア聖王家にとっても開拓が進み豊かになり、かつ犬のように忠実なアリティアを重要視していたのではないか。裏切ったアドリア侯ラング、サムスーフ侯ベントや日和見を選んだレフカンディ侯カルタスに対しては関係性が冷えていたのかもしれない。
真相はわからないが、味方を増やすマルスの政治力はアカネイアとの関係性を築いてきた代々のアリティア王から受け継いだものなのではないか。
この記事へのコメント
以外に恵まれていたマルスですが、それを最大限生かす力があります。ハーディンは思った以上に不利な位置から成り上がる力があります。
どちらの英雄も魅力的だと思っています。
エリスが生かされたのはオームの杖という人を生き返らせることができる奇跡の杖が使えたからという説はどうでしょう
例外的に生かしておいて自分たちの仲間に丸め込むつもりだったとか
コメントありがとうございます。
エリスがオームの杖を使えるために生かされた説は十分に考えられることですね。
オームの杖はリメイクが出るたびに使える人が増えるので、どう解釈したら良いのかと答えは出ていません。
エリスについての考察はまとまったら発表します。
何で実績のない亡国王子であるマルスがハーディンを押し退けてファイアーエムブレムを得ることが出来たか合点が行きますね。
マルスの母方が聖王家の出となれば、マルスとニーナは従姉弟同士になりますかね。
ただ、これもハーディンの計算のうちでしょうね。
自分がファイアーエムブレムを貰えば反発はでかいですが、母が聖王家であるマルスだと反発は最小限に抑えられますからね。
恐らくマルスとニーナとハーディンの間で話し合いはあったでしょうね。
マルス王子庶子説は払拭しましたけど。
でも、私はマルス王子庶子な気がします。
その理由はマルスは二度も祖国アリティア王国を追われています。
二度目はハーディンの裏切りですが、あっさりとアリティアが制圧されたのは、アリティア王国古参重臣たちの裏切りが大きいでしょうね。
これはシーダとの結婚や改革など、マルスは既得権を貪って来た古参の重臣たちから快く思われてなかった可能性があります。
それにアリティア王国の古参重臣達がマルスを見限ったのは、正統な王族の血筋とみなしてない気がするんですよ。
実はマルスの母は公的にはリーザですが、本当のマルス王子は幼い時に病死してしまい。
コーネリアス王は密かに保険として側女に産ませた子をマルスにした気がします。
妾腹の子でも、正妻に世継ぎがない場合は王になれますからね。
それでも、マルスが捻くれなかったのは継母リーザと異母姉エリスのお陰かもしれません。
長文になってすいません。
マルスの母リーザが聖王家の流れを汲む人物と考えるとマルスとニーナは割りかし近い縁戚なんでしょうかね。解放戦争から暗黒戦争までの期間は100年程度ですし。コーネリアスの元にリーザが嫁いだのはアンリとアルテミスが結ばれなかった負い目からでしょうか。
逆説的にいえば、そこまでの犠牲を払ってまで戦っているということが支持を集める理由にはなると思います。また、万が一ドルーア側からの働きかけで離脱されても困るわけで、そのためにアカネイア側が名誉ある地位を与えて足抜けを許さない形に持ち込もうとしたことは考えられると思います。
そしてお久しぶりです。
暗黒戦争期にガーネフがエリスを助命した理由は、『死者を蘇生するオームの杖を使える事』はゲーム本編でエリス自身が証言してますね。
ただし、ガーネフ自身の真意にはほぼ触れられていません。
英雄戦争のエリスはメディウス復活の為の生贄として扱われている。
そして英雄戦争期に死者蘇生の計画を取り止めた理由が何かに関しては、ファイアーエムブレムの物語では推測しようが無いので一旦保留しますが、ここでは何故ガーネフがエリスを丁重に保護したかを自分なりに考察します。
暗黒戦争時点で、『オームの杖を使用できる』、『シスター系が本職(≒兵種変更組は除外)』、『ガーネフが認知出来る』という条件を満たすのは、エリス、ユミナ、マリア(新)、ニーナ(新)の4名。
この内ニーナはカミュによって逃がされたので除外。
エリスはテーベ、マリアはディール要塞、ユミナはユベロ共々カダインにてそれぞれ人質として確保されていました。
マルス視点の物語では、エリスはガーネフにとってオームの使い手の最重要人物として確保されたように写りましたが、
オームの使い手を複数人確保していた事実を考慮したら、ガーネフにとってはエリス個人よりも『死者蘇生計画』の方が大きな目的であった可能性が浮かび上がります。
『ミネルバを従える為の人質』と同時に『オーム計画の為のカードの一つ』だったと見れば、彼女が丁重に扱われた理由が伺えます。
ユミナは弟共々ドルーアへの人質として差し出されて、暗い部屋の中で半死半生の状態で発見されたとの証言があります。
この件も、カダインでの戦いでガーネフがカダインを追われた結果、グルニア姉弟の保護が不可能になった事が、最大の原因だったのでは無いでしょうか。
敗走中のガーネフの優先順位も、『一品物のファルシオン>予備のエリスを確保してあるオームの使い手ユミナ』になるのは必然。
双子視点でも『結局自分達を見捨ててどこかへ逃亡した結果、自分達は冷遇された』となる訳です。
そしてエリス。
マリアが奪還されて、ユミナをカダイン諸共手離すことになったガーネフにとっては、彼女こそ手元に残った死者蘇生計画実現のための最後のカード。
また、奇しくも彼女はマルスの姉でもあります。
そういった経緯で、彼女への処遇はより一層丁重かつ強固になっていったのでは無いのでしょうか。
ニーナの祖先であるアルテミスが
「アカネイア王家の中で元々どの地位に居たか」
はゲーム中では一切語られていないんですよね。
単に王家の生き残りであるとしか語られていません。
案外、ドルーア戦争が起きなければアルテミスはアンリの元に嫁ぐ予定だったのではないでしょうか?そうすることでアリティアを統一し、アカネイアの秩序に組み込ませる算段だったのでは?
少なくともアンリと配下の豪族達はアルテミスを婚約者と考えていたと思います。そうでなければジェイガンがマルスに語ったように全滅覚悟で危険を冒してまで守ろうとはしないでしょう。
最終的にアルテミスが王家の唯一の生き残りであるという理由で、アルテミスの夫にはアンリではなくカルタス伯が選ばれましたが、メディウスが討伐されてドルーア戦争が終結するまでの段階ではアンリにもまだチャンスがあったのではないでしょうか?
少なくともアンリはそう感じたからこそファルシオンを求めて旅立ち、メディウスと必死に戦ったのではないかと。
ガーネフがエリスをさらった目的を述べたのはエリス自身ですがそれは一時的にガーネフの妻になっていたという不名誉を隠す為ではなかったでしょうか。あるいはマルスや後のアリティア王朝が隠匿した可能性もあります。
いずれはドルーアも打倒して世界征服をというガーネフですが勢力の基盤となっているのはカダインとテーベぐらいのみで新たな勢力基盤を得る為にエリスを妻に迎えようとしたのではと考えました。ニーナはアカネイアの生き残りでドルーアから警戒されておりマリアとユミナはまだ結婚適齢期には達していない訳ですし。アンリの子孫を妻に迎える事で将来的にドルーアと対決した時の大義名分にもなります。
属国アリティアの王子にしてはマルスの待遇が良過ぎるのでは?もしかするとマルスの血統はハーディン以上なのでは?となると、アンリの時代よりもかなり格の高い血が入っているのでは?と考えた次第です。
>ロギーさん
確かにマルス王子庶子説は紋章を託された事実から考えにくいかもしれませんね。アリティアの重臣の一派との確執は確実にありそうですが、そこの考えは近々記事を一本書きます。
>makiさん
マルスは母殺し、という見方も出来ますね。他にも切り捨てられた存在は多数いて、巧妙に隠されていると言えます。アカネイアからの戦中の厚遇と戦後の冷遇のギャップは離脱されたくないか、させたいかの違いでしょうかね?
> limeさん
ガーネフがオームの杖を欲した理由はもはや想像の域を出ないですね。死者の復活が非常識な世界なので、政治的に効果的に活用するのは難しいような気がします。ごく個人的に大切な人とか、不老不死の研究とかあたりでしょうか。
>肉味噌さん
アルテミスもニーナもアカネイア王の娘という以外に情報は無く、生まれた順番や母親が分からないので本来の格は不明ですね。アンリがアルテミスの婚約者だったけど、アカネイア復興のために家格の高いカルタス伯を受け入れたという説は十分ありえそうです。元々アカネイアはアリティアを取り込む算段があったのかもしれません。
>あらたさん
ガーネフの弱みは権力基盤が無い事ですから、それを得るにはどっかの国を乗っ取るしかありません。グルニアやマケドニア、ドルーア、グラだけでなくアリティアもその候補でしょうか。アカネイアにそういう工作を仕掛けていないところを見ると、アカネイアは彼の中で議論の余地無く仇敵だったのでしょう。ガーネフについても取り上げたいですね。
助けて・・ガーネフが・・・
こわい・・お願い 助けて!
あらた様の考察を踏まえて改めて見直すと、このセリフは意味深ですね。
物語の中に、マリクとエリスの恋愛が組み込まれたのは、ガーネフ絡みの不名誉を隠蔽する狙いもあったのでしょう。
オーム要員兼、新たな権力基盤の為の重要な人員ならば、ガーネフのエリスに対する待遇の理由が解ったような気がします。
コメントありがとうございます。
確かに入口では厳しい目をと書いていますが、考察をするほどマルスの大人物ぶりが浮き立っていますね。結論を考えてから書き始めますが、書いているうちにコレ違うなって、構成からやり直すことはよくあります。最初から自分の思い通りに筆が進むより、登場人物に抵抗される方が楽しめますね。
マルスがハーディンを差し置いてファイアーエムブレムを託された理由ですが、ずばり家格では無く血筋だと思います。
俺が、アリティアを攻めたのは
貴様が憎かったからだ。
前の戦いではアンリの子孫であると
言うだけで、
ニーナからエムブレムを託され
盟主にまつりあげられた。
光の王子だと…馬鹿め!
貴様など、俺の協力がなければ
とっくの昔に死んでいた。
つけあがるなよ、マルス!!
俺はその頃から貴様が
憎かった。
これはハーディンがずっと隠していた本音でしょう。
アンリの子孫というだけでファイアーエムブレムを託されるとかずるい!とハーディンが思わず嫉妬してしまうような出来事があったと解釈できるんじゃないでしょうか。
敵がドル―ア、そしてメディウスでなければ、ファイアーエムブレムを託されたのはハーディンだったかもしれませんね。
また、戦後にハーディンが「グラの面倒を此方で見るから代わりにマケドニアをアリティアで・・・」と言う落とし所を考えている点も併せると、「マケドニア軍相手に長期戦を続けていたハーディンはマケドニア系の人間の恨みを買っているのでは?」とも思えます。
戦役勃発時にマケドニアが「アカネイアは頼りにならないから取り敢えずドルーアに降参(ミシェイル)」と「アリティアは頼りになるかもしれない(ミネルバ)」と意見が割れているので、案外、平時のアリティアとマケドニアは友好的なお得意先だったのかもしれません。
物語中では敵が多く最終的には孤立した覇道のハーディン皇帝と敵すらも味方につける王道のマルスという対比がなされていますが、実際も敵だらけだったと推測できます。マルスは血筋に恵まれ、実績の無さすらもプラスに作用して、非常に妬ましい存在ですね。
(´・ω・`)家格とか以前に、あの時点でマルスの半分以下の戦力しか持たなかったハーディンにファイアーエムブレムを託したらマルスやジェイガンが黙って無かったと思う。
マルスにはニーナを見捨てて進軍するオプションはあったけどニーナはマルスを頼るしか無かったんじゃないかなあと。
アリティア王家を全滅させたらその後の統治がやり難くなるでしょうし。
マルスを始末した後はエリスとドルーアの息がかかった適当な王族や貴族と結婚させて統治させたのでは。
ゲームオブスローンズに例えるとエリスはサンサ=スタークの立場ですね。マルスはロブ=スタークかな。
夢見がちで少女趣味が抜けない(戦場ですら巻き髪が命)あの女が自らをアルテミスに重ね愛するアンリの子孫にエムブレムを贈りたいと妄想していたのは想像に難くない。
しかし実際のマルス王子は、鬼太郎ヘアーの隙間から覗く死んだような目を持ち世界を呪う邪気を纏ったインキャ。
SNSも無い時代、肩書きでパンピーは騙されるかも知れないが実物を見ればドン引きするのは間違いない。
あの女からすれば結婚などもってのほか、ボアには近親婚を理由に婿候補から外させたのでしょう。
もちろんあの女には家柄も容姿も内面も完璧な推しメンが居たからに他ならないが。
陰鬱キャラマルスがグラに赴いたカミュにどのように接したかは推して知るべし。
ハーディンとの同族嫌悪はあったと思われる。