FE考察~竜族の文明1・竜族と魔道と人間
今回は大賢者ガトーについての考察をする。紋章の謎によると彼は神竜族の出身で人間たちに魔道を教えたとされる。彼が何故人間たちに魔道を教えたのか?彼自身の正体は?という謎に迫りたい。
【魔道とは】
FE世界での魔法とはどのようなものか。まずはデザイナーズノートから
http://web.archive.org/web/19980211010259/intsys.co.jp/game/fireemblem/note/3.html
要約すると、
■魔道とは自然に存在するエネルギーを集積しコントロールする技術
■竜族にとっては技術、人間にとっては神々の力を借りる行為。
■人間の中では厳しい修行をした聖職者が使う。
■魔道書や杖は魔道の力を集積しコントロールする器。
■人間に魔道を教えたのはガトー。
■アカネイア王は貴族の子弟を聖職者に養成する。
■ガトーの弟子は修行で得た力により人々の救済を行う。
【なぜ魔道を教えたのか?】
竜族であるガトーは何故人間に魔道を教えたのだろうか?
人々を助ける為にというのは、後世に大陸の覇者となった人間側に都合の良過ぎるお伽話ではないだうか。
何が言いたいか。魔道を教える側の竜族(ガトー)にも何らかのメリットというか下心があったのではないだろうか。
そもそも竜族の中でも神竜族と呼ばれる一派は人間に肩入れし過ぎなのではないか。魔道を教えたガトーとファルシオンを与えたナーガ、直接戦闘に介入し同胞である竜族を多数殺したチキ、チェイニーも神竜族らしく、人間が同胞を殺すのに加担した。(※ただしこれらのエピソードは人間視点の伝承だという事には注意が必要。)
彼らは人間が竜族を殺し、人間側の大陸の覇者としての竜族に取って代わる事に加担しているのだ。竜族から見たら同胞殺しの裏切り者という見方も出来る。
人間もまた人間同士殺し合っている。そしてグルニアやマケドニアは憎きアカネイアを滅ぼす為に竜族の力を利用している。それが暗黒戦争である。
竜族の中でも竜族同士の勢力争いは起きていて、劣勢だった一派の神竜族(以後便宜上こう呼ぶ)が優勢だった地竜族を中心とする一派に対抗するために人間族を自派の戦力として利用しようとしたのではないか。例えば「地竜族は人間を根絶やしにしようとしている邪悪な種族だ。」と唆すなど。
しかし劣勢の自派の戦力を補うには人間たちの頭数や肉体労働、戦闘力だけでは不足していたと思われる。より戦力としての有用性を高めるために、自分たちの技術の一部を人間たちに授けたと考えられる。当時文明的に未成熟だった人間たちに彼らの信仰(竜族から見ればその多くは迷信に見えただろうが…)と結びつける形で自分たちの技術=魔道を仕込んでいったとか…?
【竜族の文明社会を考察】
マケドニアの建国王アイオテは元々旧ドルーア帝国の奴隷だったという記述と紋章の謎終章の敵の構成(竜族、司祭、蛮族)から旧ドルーア帝国の文明社会を考察してみる。
旧ドルーア帝国の社会には竜族が貴族で、人間を奴隷として使役する社会だったと考えられる。竜族は高度な教養と魔道、竜への変身能力といった優位性をもって階級社会の上位に君臨していた。
おそらく旧ドルーア帝国の階級を想像するなら以下のようになるのではないか。
上位竜族(いわゆるマムクート。特別な竜に変身出来る。地竜族、神竜族など)
下位竜族(マムクートの中にも階級はある。火竜族、氷竜族など)
司祭・魔道士階級(ドルーア地方の司祭、魔道士、僧侶は竜に変身出来ない竜族。
ここまでがギリギリ貴族だろうか?)
戦士階級(勇者、スナイパー、蛮族。守る命知らずの戦士たち。人間かもしれない。)
奴隷階級(人間族。下等種族として労働力や兵隊として使役される。)
階級を分けるラインは竜に変身出来るか否か、文明の産物である技術(魔道)を使えるか否か、竜族か人間族か、といったところだろうか。
魔道士、僧侶、司祭のユニットがフードを被っているのは竜族の時代の名残とも考えられる。
【支配者階級と魔道】
魔道という言葉には邪悪な力あるいは手段というニュアンスがある。この意識を持っているのは人間社会側だろう。人間から見て魔道は邪悪な竜族の力という意識があるのではないか。魔道士たちがカダインの砂漠に隔離されている事からも魔道への忌避は根強いと思われる。
反面、魔道士や司祭の多くは高貴な身分の者がなっていて、ボアやミロアなど重要ポストに就いている者も少なくない。マリアやユミナ、エリス、レナなど王族貴族の姫はシスターとしての訓練を受けていることが多い。高貴な身分の者が邪悪な力を行使するのはどういうことか。
これは魔道という危険だが役に立つ力を使いこなすには、高貴な血筋に流れる精神力とそれを伸ばす修行が必要なとされているのではと考える。この「建前」により強大な魔道の力を支配者階級で独占すると共に支配者階級が支配者たる正当性も担保しているのではないか。
魔道を使いこなす高貴な者がそうでない民を支配するのは、竜族の文明の価値観だが、人間本来の価値観は魔道は邪道で剣の力こそが王道と思われる。古い時代のアカネイアは元々人間たちの文明社会だったが、より進んだ竜族の文明が入って来て変化したのではないだろうか。剣槍弓が英雄の象徴として尊ばれているからだ。
剣槍弓の力で人間の王として君臨していた古代アカネイア人だったが、より強大な竜族の文明との衝突に際し、竜族の力を受け入れて自らの戦力や文化、支配力を高める道を選択したのではないだろうか。
【竜族は何処へ行ったのか?】
竜族と人間の決戦となった解放戦争では、アンリの活躍により地竜王メディウスは倒され、人間と神竜族の勝利に終わった。
この戦争以後、竜族は何処に行ったのだろうか?人間の迫害を受けてドルーアの奥地に引っ込んでしまった者もいるだろうが、案外人間社会に溶け込んでしまった者も少なくないのではないか。竜石が無ければ只の人と変わらないのだから。
また勝利者のはずの神竜族は人知れず姿をくらましてしまった。皮肉な話だが、元々数の少ない神竜族は力をつけた人間たちに大陸の覇者のの座から追いやられてしまったというのが可能性の高い話ではないか。
かくして大陸の覇者の座を竜族から奪った人間たちではあるが、強大な竜に対して無力だった頃の恐怖の記憶とその時や救いの力ををもたらしてくれた神竜族への畏怖は世代を超えて深層心理に刻まれている。
竜族は数を増やした人間たちに大陸の覇者としての座は明け渡したが、神への信仰として人間たちの中に生き続けている。
この記事へのコメント
昔のファイアーエムブレムやドラクエは情報量が少ない分、想像の余地が大きいというか、なんとでも解釈出来ます。
ガトーについてもペットに芸を仕込む軽い気持ちで人間に魔道を教えたらとんでもない事になって、竜族社会を追われた…という説も考えていました。
地竜族への対抗手段として魔道技術を人間達に教えたら、逆にガトーたち神竜族は大陸での地位を失うとは、
まさに『庇を貸して母屋を取られる』その物ですね。
しかし、当時のガトーたち神竜族は地竜族に圧迫されて厳しい状況を考えると止む終えなかったかもしれません。
魔道と支配階級の関係性をみてると。
サガフロンティア2の術社会を思い出します。
あそこはアニマという術が全ての世界でしたから、術を使える奴は特権階級とみなされてましたからね。
そう考えると王侯貴族が自分達の子弟に術を教え込ませるのも納得が行きますね。
竜族に関する考察をお疲れ様です。
竜族の関するその後の動向として覚醒を参照するならば、チキが『神竜の巫女』として神竜信仰における崇拝と畏敬を集めている事がまず挙げられます。
ただし、神竜信仰が盛んなのはイーリス大陸(アカネイア大陸の後身)の隣のヴァルム大陸。
このヴァルム大陸はバレンシア大陸の後身である可能性が高い訳ですが、暗黒戦争・英雄戦争における重要人物にして英雄王マルスの人となりを知る『生き証人』であるチキが2000年後にはアカネイア大陸から拠点を移している事には、何かしらの事情があったのでしょうか。
神竜ナーガが住んでいた(らしい)『神竜の大地』が存在するのもやはりヴァルム大陸。
或いは、ヴァルム大陸の宗教観は、神道と仏教とキリスト教が何となく共存している日本に近いものなのか。
その他には、ノノというマムクートが覚醒に登場します。
彼女はマルス達の世代の約1000年後(覚醒世代の約1000年前)に生を受けて、隠れ里にて少数の同族とひっそりと暮らしていたそうです。
彼女の生まれた場所は(ノノが育った隠れ里に該当する場所かは不明)は『海を越えたずっと左』との事。
彼女がヴァルムの生まれだとすれば、ヴァルムの竜族は、子供が生まれなくなる滅びの宿命から免れていたのか、或いは神竜族(作中ではノノが何族かは語られていない)は滅亡の宿命は覆されたのか。
事実、彼女は人間の夫との間に娘(達)を残す事も可能です。
…因みに、チキの知る限りでは、人間とマムクートの混血児は前例が無かったとか。
(売ってる人間も買ってる人間も『宝石』という認識)
宝石なだけに単価も銀武器の1.5倍位で、決して安い物ではありませんが、経済面を克服すればマムクートが人間の中に溶け込む事も不可能では無さそうだし、或いは竜石の原産地に隠れ里を構えたかも知れません。
覚醒世代ではマムクートは伝説の種族ですが、伝説になりすぎた事で、『人類にとっての脅威』として目の前に立ちはだかるかも知れないと言う人間達の恐怖も徐々に現実味を無くしたのだろう。
結果として人間が支配している未来の世界は、マムクート達がひっそりと暮らしていく分にもさほど不便のない社会なのかも知れません。