ドラクエⅡ考察~文明と信仰編1・文明のルーツ
【文明と信仰編】
今回から始める文明と信仰編ではドラクエⅡ世界の文明と信仰は何処から来たのか、あるいは何処で発生したのか、そしてどのように伝播し、どのように発展したのかを探ってみたいと思う。
【始まりの地アレフガルド】
ドラクエⅡ世界での文明の始まりの地としてまず考えられるのはアレフガルドだろう。アレフガルドからルプガナ→砂漠地帯→ムーンブルク→サマルトリア→ローレシアのコースはロトの末裔の通った道でもある。素直にロト伝説を読むならアレフガルドを文明の始まりの地だと仮定しても良いのではないか。
【上の世界の存在】
ただロト伝説に従ってアレフガルドを世界の文明の始まり地と定めた場合、さらにその前がある。ドラクエⅢで言うところの“上の世界”である。
“上の世界”との間には文化的に共通点が多い。例えば呪文や道具、装備、教会である。Ⅲ主人公が“この世界”を始めて訪れた時に出会った男が特に動じた様子も無く『あんた、上の世界から来たんだろう。』というリアクションをしているところから察するに、“上の世界”と“この世界”の文化的交流はⅢの時点で当たり前のように存在していたようだ。
ただしその行き来は決して頻繁ではなかった。なぜなら”上の世界”側の入り口は猛者のひしめくネクロゴンドの山頂付近という人の出入りが極めて限られた場所にあるからだ。しかしその割には当時のアレフガルドには“上の世界”からの影響を感じさせるものは多い気がする。
逆にアレフガルドから“上の世界”への移動はほぼ無かったと考えられる。単純に考えて上から下に落ちるのと、下から上に行くのとでは前者の方がずっと容易だ。アレフガルドに“上の世界”から来た者は何人かいたが逆は一人もいない。それに“上の世界”の文明はアレフガルドよりも成熟している。文明は上から下に伝播して行ったと考えるのが自然だろう。
【上の世界から伝わったもの】
“上の世界”から伝えられた技術や文化は多い。(参考:受け継がれる?伝説の武具・後編)ゲーム的に分かり易いのは武具や魔法だろうが、それよりも大きな影響を与えたのは宗教だ。カミの加護を与え教えを伝える教会である。ドラクエⅡの時代には世界中に広まって巨大な情報ネットワークを形成している。
しかしその布教は決して順風満帆ではなかった。アレフガルドには大地の精霊ルビスを、アレフガルドを出ればシドーを信仰する土着信仰が既に根付いていたからだ。
アレフガルドは大魔王の出現により全ての生命を司るカミの加護である僧侶の呪文の需要が高まっていた事と現人神として実在していたルビスが大魔王に囚われてその神通力が落ちたことで一時的に教会の勢力が伸びたが、大魔王とロトが姿を消すのと同時に教会もアレフガルドから追いやられてしまった。(参考:教会とアレフガルド、そしてロト)
【ネクロゴンド文明?】
ところでアレフガルドへの入り口のあるネクロゴンドだが、そこにはアレフガルドのルーツたる文明が存在したのだろうか?
ネクロゴンドの地形を見る限りバラモス城やギアガの大穴付近に文明が発達したとは考えにくい。狭い高山地帯で気候も厳しそうで、食料生産どころか普通に暮らすのも難しそうだ。だがガイアの火山の南からネクロゴンド洞窟までの地域には結構広い平原が存在する。ドラクエⅢの時代には影も形も残ってはいないが、ネクロゴンドの麓には独自の文明が存在していたのではないかと考えられる。
ネクロゴンド文明は滅びた文明だが、その文化はアッサラームやテドン、ギアガの大穴の下のアレフガルドへと伝わったのではないか。
いや、アッサラームやテドンの文化がネクロゴンドに伝わったとも考えられるか。他の土地から流れて来た人々がガイアの火山地帯を越えて辿り着いた土地がネクロゴンド高地と考えるのが自然かもしれない。文化の伝播はアッサラーム→ネクロゴンド→アレフガルドとすると、すっきり収まる。
ネクロゴンド文明を考察すると、広い平野による高い生産性が多くの人口を支え、海岸沿いにそびえ立つ山脈は外敵の侵入を阻む天然の要害となっている。つまり豊富な食料があり外敵の侵略も無いので独自の文化が発達した、一見理想の楽園だったと考えられる。
それが何故滅びたのか?バラモスの登場、火山活動、内乱、疫病etc…、様々な要因が考えられる。
【楽園・ネクロゴンドとギアガの大穴】
ところでアレフガルドに渡った人々はネクロゴンド文明において、どういう人々だったのか?
楽園・ネクロゴンドでは生きられなくなった人々なのは間違いない。
例えば処刑の方法としてギアガの大穴に落とされるとか。あるいは生贄として捧げられたとか。バラモスの城は元々ネクロゴンドの民の神殿だったのかもしれない。後にギアガの大穴の下からバラモスや魔物が現れた時、楽園・ネクロゴンドの民は今までにギアガの大穴に落とした人々が復讐のため地獄より蘇ってきたと思っただろう。
あるいは気候の変化などの要因により楽園ではなくなったネクロゴンドから逃れるために開いた異世界への扉、それがギアガの大穴だという説も考えられる。ただしこれはバラモス登場以前の話になる。バラモスがやって来た方向に向かって逃げるのはあり得ないからだ。
バラモス登場以後にギアガの大穴を通ったのは勇者オルテガのようにバラモスに立ち向かって行った者たちだろう。戦いに敗れて落とされたその先は大魔王の支配する闇の世界なのだから。いや、あえて敵の本拠地に攻め込んだとも考えられる。
とにかくドラクエ3の時代にはネクロゴンドに人間は残っていない。そして、ギアガの大穴の下には上の世界の文化の影響を受けた、また別の世界が存在していた。
【そして次回以降へ】
ドラクエ2世界の文化の多く、特にカミの教会を信仰する文明は上の世界から伝わったものである。しかし下の世界には先住民による土着信仰をベースとした文化もまた存在していたと考えられる。大地の精霊ルビスと破壊の神シドーである。
今回から始める文明と信仰編ではドラクエⅡ世界の文明と信仰は何処から来たのか、あるいは何処で発生したのか、そしてどのように伝播し、どのように発展したのかを探ってみたいと思う。
【始まりの地アレフガルド】
ドラクエⅡ世界での文明の始まりの地としてまず考えられるのはアレフガルドだろう。アレフガルドからルプガナ→砂漠地帯→ムーンブルク→サマルトリア→ローレシアのコースはロトの末裔の通った道でもある。素直にロト伝説を読むならアレフガルドを文明の始まりの地だと仮定しても良いのではないか。
【上の世界の存在】
ただロト伝説に従ってアレフガルドを世界の文明の始まり地と定めた場合、さらにその前がある。ドラクエⅢで言うところの“上の世界”である。
“上の世界”との間には文化的に共通点が多い。例えば呪文や道具、装備、教会である。Ⅲ主人公が“この世界”を始めて訪れた時に出会った男が特に動じた様子も無く『あんた、上の世界から来たんだろう。』というリアクションをしているところから察するに、“上の世界”と“この世界”の文化的交流はⅢの時点で当たり前のように存在していたようだ。
ただしその行き来は決して頻繁ではなかった。なぜなら”上の世界”側の入り口は猛者のひしめくネクロゴンドの山頂付近という人の出入りが極めて限られた場所にあるからだ。しかしその割には当時のアレフガルドには“上の世界”からの影響を感じさせるものは多い気がする。
逆にアレフガルドから“上の世界”への移動はほぼ無かったと考えられる。単純に考えて上から下に落ちるのと、下から上に行くのとでは前者の方がずっと容易だ。アレフガルドに“上の世界”から来た者は何人かいたが逆は一人もいない。それに“上の世界”の文明はアレフガルドよりも成熟している。文明は上から下に伝播して行ったと考えるのが自然だろう。
【上の世界から伝わったもの】
“上の世界”から伝えられた技術や文化は多い。(参考:受け継がれる?伝説の武具・後編)ゲーム的に分かり易いのは武具や魔法だろうが、それよりも大きな影響を与えたのは宗教だ。カミの加護を与え教えを伝える教会である。ドラクエⅡの時代には世界中に広まって巨大な情報ネットワークを形成している。
しかしその布教は決して順風満帆ではなかった。アレフガルドには大地の精霊ルビスを、アレフガルドを出ればシドーを信仰する土着信仰が既に根付いていたからだ。
アレフガルドは大魔王の出現により全ての生命を司るカミの加護である僧侶の呪文の需要が高まっていた事と現人神として実在していたルビスが大魔王に囚われてその神通力が落ちたことで一時的に教会の勢力が伸びたが、大魔王とロトが姿を消すのと同時に教会もアレフガルドから追いやられてしまった。(参考:教会とアレフガルド、そしてロト)
【ネクロゴンド文明?】
ネクロゴンドの地形を見る限りバラモス城やギアガの大穴付近に文明が発達したとは考えにくい。狭い高山地帯で気候も厳しそうで、食料生産どころか普通に暮らすのも難しそうだ。だがガイアの火山の南からネクロゴンド洞窟までの地域には結構広い平原が存在する。ドラクエⅢの時代には影も形も残ってはいないが、ネクロゴンドの麓には独自の文明が存在していたのではないかと考えられる。
ネクロゴンド文明は滅びた文明だが、その文化はアッサラームやテドン、ギアガの大穴の下のアレフガルドへと伝わったのではないか。
いや、アッサラームやテドンの文化がネクロゴンドに伝わったとも考えられるか。他の土地から流れて来た人々がガイアの火山地帯を越えて辿り着いた土地がネクロゴンド高地と考えるのが自然かもしれない。文化の伝播はアッサラーム→ネクロゴンド→アレフガルドとすると、すっきり収まる。
ネクロゴンド文明を考察すると、広い平野による高い生産性が多くの人口を支え、海岸沿いにそびえ立つ山脈は外敵の侵入を阻む天然の要害となっている。つまり豊富な食料があり外敵の侵略も無いので独自の文化が発達した、一見理想の楽園だったと考えられる。
それが何故滅びたのか?バラモスの登場、火山活動、内乱、疫病etc…、様々な要因が考えられる。
【楽園・ネクロゴンドとギアガの大穴】
ところでアレフガルドに渡った人々はネクロゴンド文明において、どういう人々だったのか?
楽園・ネクロゴンドでは生きられなくなった人々なのは間違いない。
例えば処刑の方法としてギアガの大穴に落とされるとか。あるいは生贄として捧げられたとか。バラモスの城は元々ネクロゴンドの民の神殿だったのかもしれない。後にギアガの大穴の下からバラモスや魔物が現れた時、楽園・ネクロゴンドの民は今までにギアガの大穴に落とした人々が復讐のため地獄より蘇ってきたと思っただろう。
あるいは気候の変化などの要因により楽園ではなくなったネクロゴンドから逃れるために開いた異世界への扉、それがギアガの大穴だという説も考えられる。ただしこれはバラモス登場以前の話になる。バラモスがやって来た方向に向かって逃げるのはあり得ないからだ。
バラモス登場以後にギアガの大穴を通ったのは勇者オルテガのようにバラモスに立ち向かって行った者たちだろう。戦いに敗れて落とされたその先は大魔王の支配する闇の世界なのだから。いや、あえて敵の本拠地に攻め込んだとも考えられる。
とにかくドラクエ3の時代にはネクロゴンドに人間は残っていない。そして、ギアガの大穴の下には上の世界の文化の影響を受けた、また別の世界が存在していた。
【そして次回以降へ】
ドラクエ2世界の文化の多く、特にカミの教会を信仰する文明は上の世界から伝わったものである。しかし下の世界には先住民による土着信仰をベースとした文化もまた存在していたと考えられる。大地の精霊ルビスと破壊の神シドーである。
この記事へのコメント
ネグロゴンドってアフリカなイメージがあります
今回はドラクエ3考察とも言える話でしたが、地球とは似て非なる世界だなと思いました。ドラクエ3考察をするとしたら、そこが切り口になりそうです。
オルテガと勇者一行以外に登場する上の世界から来た人間ってマイラのジパング夫婦とカンダタ、あとリメイク
版でアッサラームの踊り子がいるけど、上の世界の人間の認識としては追い詰められた人間が最後に頼るような場所だったんでしょうかね?
ギアガの大穴が異世界への入り口だと知っていたとしても、底の見えない大穴に身投げするの並外れた覚悟が必要だったのではと思います。生死に関わらず帰れないのは確かですから。
楽園・ネクロゴンドは知る人ぞ知る伝説だったのかもしれません。上の世界に生きる場所を見出せなくなった人にはとても魅力的な伝説だったと思います。
上の世界に生きる場所を持っている圧倒的大多数の人々はギアガの大穴に飛び込む必要は無いわけで、彼らから見たらやっぱりネクロゴンドは自殺の名所でしかなかったでしょう。
それにしてもアッサラームの踊り子、何者なんでしょうね。彼女一人で考察一本書けそうです(笑)
ロト三部作は、すなわちロトの血を引くものの闘いは、実は宗教代理戦争でもあった、という説は圧巻の説得力と思います。
主人公たちのみならず、世界中の隅々の人たちにまで視野を巡らせてお考えになった賜物かと思います。
Ⅲの世界全体にまで考察を広げるのは大変かと思いますが、シャーマン類(辺境の地にばかりいるのは気にかかります)やまほうつかい類といった何らかの教義を抱いていそうなキャラクターについては意味がありそうですね。
宗教的な考察を加味すると、ギアガの大穴に元々生贄の祭壇があったという説はとてもしっくりきますね。
DQ3の考察は下手に手を出したら大変そうだと思って、あまり触れずにいたのですが、ロト装備の話など実際に想像を膨らませると楽しかったです。ネクロゴンド文明の文化については色々と考えはあったのですが、“DQ2考察”の本題から大きく逸れてしまうのでボツにしました。しばらく寝かせていずれ発表出来ればと思います。
元ネタはエニックス公式のモンスター物語だった気が…(手元にないのでうろ覚えごめんなさい
コメントありがとうございます。
ドラクエ2考察はゲーム中で得られる情報からの考察、という方針なので関連書籍からのネタは基本的に採用しない方針ですが、「モンスター物語」などは大好きで、よく読んでいました。
作られた魔物とか、改造されたとかの説は子供の頃読んだ本の影響もあるのかもしれません。