ドラクエⅡ考察~教会とアレフガルド、そしてロト
【時の国王幽閉】
前回の考察でアレフガルドの民は王を必要としなくなっていた(ローレ王子視点)と述べたが、実際はそんな事はない。確かに王がいなくても国民の生活は回っているが、アレフガルドの国民の潜在意識では王は必要不可欠である。少なくとも教会はそう考えている。根拠はある。
①王を追放も抹殺もしていない
②それ以前に王制打倒を宣言していない
ラダトーム王は武器屋の2階に隠れているのではなく、幽閉されていると仮定する。
教会がラダトームの実権を握ったのは要は王が邪魔だったからだろう。おそらくハーゴンや竜王の曾孫への対処についての方針で対立したためと考えられる。(参考:ラダトームと竜王の物語)
ここで注目すべきは『王がハーゴンを怖れて隠れた』ことになっている点である。ハーゴン登場という国難を乗り切るのに時の国王個人は邪魔だが、王という存在そのものは必要なので『ハーゴンを怖れて隠れた』事にして一時的に時の国王を退場させているということだ。また時の国王は『ハーゴンを怖れて隠れる』のは不思議ではない凡庸で小心な人物だという評価も定着していたのは幸いだった。こうして教会は体よく邪魔な国王を一時退場させて、ハーゴン侵攻に対する臨時的な危機管理政府を作ったのだ。
王が必要なのに時の国王が足手まといという状況だったなら教会は代わりの王を立てるべきだろうが、それはしていない。何故か?適任者がいなかったのだろう。代わりの王がいないのに時の国王を一時排除せざるを得ないほど時の国王は無能だった。国王不在のラダトームの民が全く困った様子が無い事実も時の国王の無能さを示している。
ラダトームの実権を握った教会ではあるが、伝統国アレフガルドで王不在という体制にはやはり不安があったのだろう。万が一、王不在による不都合に対処しきれなくなった時には再び国王を登場させられるように ひとまず手の届く場所に押さえておくことにした。その時には(無能な)国王が盛大に持ち上げられるのだろう。それはそれで面白いかもしれない。
たまたまこの時期にラダトームを訪れたローレ王子の目には王を必要としなくなった国に見えたのだろうが、本当はそんな事は無いのである。
【ロトの子孫の帰還】
教会による臨時政府の弱みはリーダー不在という点だが、国王のスペアになりうる人材がアレフガルド国内にいないのも痛い。しかしアレフガルドの危機を救うカリスマ的リーダーは外からやって来た。ロトの子孫である王子たちである。
彼らはラルス16世王の娘ローラの子孫でもあるので、一応ラダトームの王族ではある。しかし、血縁としては遠過ぎるし少し無理があるかもしれない。
しかしアレフガルドの伝説的英雄ロトの子孫という看板のカリスマ性は高い。それにローラ姫のカリスマ性も実はロトと並ぶほど高い。ローラ姫がいた時代も竜王にさらわれた悲劇のヒロインとして、勇者への愛を貫いたアイドルとして彼女の人気は高かった。それが100年の間に伝説となり、勇者ロトと並ぶほどのカリスマ性を得たのだ。
ロトとローラの子孫、その伝説的カリスマならアレフガルドの新たな王に相応しいと、教会やラダトームの民がそう考えていたなら、王子たちがラダトームに来た時の不自然な程の歓迎ムードや馴れ馴れしさも辻褄が合う。
王子たちをラダトームの新たな王にする案に実現性はあるのだろうか?
多少血縁的な無理があっても、ロトとローラの伝説的カリスマはそれを補って余りある。
ローレシアの王太子の地位が確定しているローレ王子はともかく、サマルトリアでの立場が微妙なサマル王子や国を失ったムーン王女なら脈はあるかもしれない。とはいえ、ロトの子孫である王子たちにとってラダトームの王位は毒まんじゅうでもある。(時の国王が健在ならなおさら) 最優先すべき目的はハーゴン討伐だとか何とか言ってこの場は辞退したと思われる。
【教会とアレフガルド】
教会のもう一つの弱みはアレフガルドにおいて教会の教えはまだ浸透しきっていないことである。
ロトの時代はアレフガルドの各都市にあった教会だが、Ⅰの時代には一切無くなっている。そしてⅡの時代にはラダトームの実権を握っている。つまりアレフガルドの教会勢力には空白の時代があるということだ。
アレフガルドに教会の教えが根付かなかった理由はおそらく歴史の古いアレフガルドの土着信仰が根強く残ったからだろう。その代表例はアレフガルドの大地を創造したとされる大地の精霊ルビスである。ルビスの力を借りろと助言してくる竜王の曾孫も生粋のアレフガルド人のひとりである。
カミの教会はロトが現れる少し前の大魔王の時代に“上の世界”から伝わったものだと考えられる。上の世界から来た僧侶たちから見れば、当時のアレフガルドは未開の土地である。精力的に布教したのだろう。それに大魔王によって闇に包まれた当時のアレフガルドには救いを求める人々でいっぱいだった。王者の剣が砕かれたり、ルビスが幽閉されたりと絶望のネタには事欠かなかった。新しい宗教を受け入れる絶好の条件だった。
そうして広まった教会の教えがⅠの時代に綺麗さっぱり無くなって、Ⅱの時代には当然のように根付いてるのは何故だろうか?土着信仰の根強さだけが原因とは思えない。
ひょっとしたら教会にもシドー教のように迫害されていた時代があったのではないか。大魔王の時代にある程度受け入れられた宗教の信者が後にいなくなるのは徹底的に弾圧されたからではないか?
しかし弾圧の手が及んだのはアレフガルド国内のみで、教会は海外に新天地を求めたのではないか?アレフガルドでは一掃された教会勢力だが、海外では順調に勢力を伸ばした。例えばルプガナ、ムーンブルク、ぺルポイあたりだろう。その途中で先住民の土着信仰であるシドー教に打ち勝って、世界中に根付いた。そして、再びアレフガルドに布教しに帰ってきたと…
もっと想像を膨らませてみる。
教会がアレフガルドで迫害され始めた時はロトが大魔王を倒した直後ではないだろうか。
ラルス王とロトのラダトームの覇権争いでロトが敗れた、それに伴いロトの支援母体である教会も徹底的に潰されたのではないか。アレフガルドから教会が無くなったのはその時かもしれない。
教会がロトの支援母体だという根拠は、ロトも教会も共に“上の世界”から来た者という事である。そしてロトの信教は教会のカミであり、ラルス王家の信教はアレフガルドの土着信仰である。
教会がその教えを布教するにあたって、ラルスとロトどちらが王であった方が都合が良いか?答えは分かり切っている。
ロトが“上の世界”の魔王を倒し、アレフガルドに上陸するという情報は当時の教会の情報網により、得ていただろう。その時教会が書いたシナリオはこんなところだろう。
天より光の玉を携えた勇者が降臨し、大魔王を倒しアレフガルドの闇を払う。そして光をもたらした英雄王とカミの教えによる新しい時代の到来だと…
ロトの伝説は当時の教会が積極的に宣伝したために人々の記憶に多く残って、後世に伝えられたのだろう。真の勇者の称号・ロトが固有名詞のように伝わってしまったのもそのためだろう。
【まとめ・教会の歴史】
1.“上の世界”から教会の宣教師がアレフガルド上陸。
2.大魔王の時代にアレフガルドに広まる。
3.勇者ロト降臨。ロトをアレフガルドの新しい王にする計画も進める。
4.ロトはラルス王との王位争いに敗れ、姿を消す。
5.ラルス王による教会弾圧政策。
6.教会は海外に新天地を求める。ルプガナ、ムーンブルク、ぺルポイなど。
7.土着信仰のシドー教との勢力争いに勝ち、カミの教えは世界中に広まる。
8.竜王の時代以後、教会勢力はアレフガルドに帰還。
9.ラダトーム王行方不明に乗じ、教会が実権を握る。
10.ローレ王子、ラダトーム訪問。
前回の考察でアレフガルドの民は王を必要としなくなっていた(ローレ王子視点)と述べたが、実際はそんな事はない。確かに王がいなくても国民の生活は回っているが、アレフガルドの国民の潜在意識では王は必要不可欠である。少なくとも教会はそう考えている。根拠はある。
①王を追放も抹殺もしていない
②それ以前に王制打倒を宣言していない
ラダトーム王は武器屋の2階に隠れているのではなく、幽閉されていると仮定する。
教会がラダトームの実権を握ったのは要は王が邪魔だったからだろう。おそらくハーゴンや竜王の曾孫への対処についての方針で対立したためと考えられる。(参考:ラダトームと竜王の物語)
ここで注目すべきは『王がハーゴンを怖れて隠れた』ことになっている点である。ハーゴン登場という国難を乗り切るのに時の国王個人は邪魔だが、王という存在そのものは必要なので『ハーゴンを怖れて隠れた』事にして一時的に時の国王を退場させているということだ。また時の国王は『ハーゴンを怖れて隠れる』のは不思議ではない凡庸で小心な人物だという評価も定着していたのは幸いだった。こうして教会は体よく邪魔な国王を一時退場させて、ハーゴン侵攻に対する臨時的な危機管理政府を作ったのだ。
王が必要なのに時の国王が足手まといという状況だったなら教会は代わりの王を立てるべきだろうが、それはしていない。何故か?適任者がいなかったのだろう。代わりの王がいないのに時の国王を一時排除せざるを得ないほど時の国王は無能だった。国王不在のラダトームの民が全く困った様子が無い事実も時の国王の無能さを示している。
ラダトームの実権を握った教会ではあるが、伝統国アレフガルドで王不在という体制にはやはり不安があったのだろう。万が一、王不在による不都合に対処しきれなくなった時には再び国王を登場させられるように ひとまず手の届く場所に押さえておくことにした。その時には(無能な)国王が盛大に持ち上げられるのだろう。それはそれで面白いかもしれない。
たまたまこの時期にラダトームを訪れたローレ王子の目には王を必要としなくなった国に見えたのだろうが、本当はそんな事は無いのである。
【ロトの子孫の帰還】
教会による臨時政府の弱みはリーダー不在という点だが、国王のスペアになりうる人材がアレフガルド国内にいないのも痛い。しかしアレフガルドの危機を救うカリスマ的リーダーは外からやって来た。ロトの子孫である王子たちである。
彼らはラルス16世王の娘ローラの子孫でもあるので、一応ラダトームの王族ではある。しかし、血縁としては遠過ぎるし少し無理があるかもしれない。
しかしアレフガルドの伝説的英雄ロトの子孫という看板のカリスマ性は高い。それにローラ姫のカリスマ性も実はロトと並ぶほど高い。ローラ姫がいた時代も竜王にさらわれた悲劇のヒロインとして、勇者への愛を貫いたアイドルとして彼女の人気は高かった。それが100年の間に伝説となり、勇者ロトと並ぶほどのカリスマ性を得たのだ。
ロトとローラの子孫、その伝説的カリスマならアレフガルドの新たな王に相応しいと、教会やラダトームの民がそう考えていたなら、王子たちがラダトームに来た時の不自然な程の歓迎ムードや馴れ馴れしさも辻褄が合う。
王子たちをラダトームの新たな王にする案に実現性はあるのだろうか?
多少血縁的な無理があっても、ロトとローラの伝説的カリスマはそれを補って余りある。
ローレシアの王太子の地位が確定しているローレ王子はともかく、サマルトリアでの立場が微妙なサマル王子や国を失ったムーン王女なら脈はあるかもしれない。とはいえ、ロトの子孫である王子たちにとってラダトームの王位は毒まんじゅうでもある。(時の国王が健在ならなおさら) 最優先すべき目的はハーゴン討伐だとか何とか言ってこの場は辞退したと思われる。
【教会とアレフガルド】
教会のもう一つの弱みはアレフガルドにおいて教会の教えはまだ浸透しきっていないことである。
ロトの時代はアレフガルドの各都市にあった教会だが、Ⅰの時代には一切無くなっている。そしてⅡの時代にはラダトームの実権を握っている。つまりアレフガルドの教会勢力には空白の時代があるということだ。
アレフガルドに教会の教えが根付かなかった理由はおそらく歴史の古いアレフガルドの土着信仰が根強く残ったからだろう。その代表例はアレフガルドの大地を創造したとされる大地の精霊ルビスである。ルビスの力を借りろと助言してくる竜王の曾孫も生粋のアレフガルド人のひとりである。
カミの教会はロトが現れる少し前の大魔王の時代に“上の世界”から伝わったものだと考えられる。上の世界から来た僧侶たちから見れば、当時のアレフガルドは未開の土地である。精力的に布教したのだろう。それに大魔王によって闇に包まれた当時のアレフガルドには救いを求める人々でいっぱいだった。王者の剣が砕かれたり、ルビスが幽閉されたりと絶望のネタには事欠かなかった。新しい宗教を受け入れる絶好の条件だった。
そうして広まった教会の教えがⅠの時代に綺麗さっぱり無くなって、Ⅱの時代には当然のように根付いてるのは何故だろうか?土着信仰の根強さだけが原因とは思えない。
ひょっとしたら教会にもシドー教のように迫害されていた時代があったのではないか。大魔王の時代にある程度受け入れられた宗教の信者が後にいなくなるのは徹底的に弾圧されたからではないか?
しかし弾圧の手が及んだのはアレフガルド国内のみで、教会は海外に新天地を求めたのではないか?アレフガルドでは一掃された教会勢力だが、海外では順調に勢力を伸ばした。例えばルプガナ、ムーンブルク、ぺルポイあたりだろう。その途中で先住民の土着信仰であるシドー教に打ち勝って、世界中に根付いた。そして、再びアレフガルドに布教しに帰ってきたと…
もっと想像を膨らませてみる。
教会がアレフガルドで迫害され始めた時はロトが大魔王を倒した直後ではないだろうか。
ラルス王とロトのラダトームの覇権争いでロトが敗れた、それに伴いロトの支援母体である教会も徹底的に潰されたのではないか。アレフガルドから教会が無くなったのはその時かもしれない。
教会がロトの支援母体だという根拠は、ロトも教会も共に“上の世界”から来た者という事である。そしてロトの信教は教会のカミであり、ラルス王家の信教はアレフガルドの土着信仰である。
教会がその教えを布教するにあたって、ラルスとロトどちらが王であった方が都合が良いか?答えは分かり切っている。
ロトが“上の世界”の魔王を倒し、アレフガルドに上陸するという情報は当時の教会の情報網により、得ていただろう。その時教会が書いたシナリオはこんなところだろう。
天より光の玉を携えた勇者が降臨し、大魔王を倒しアレフガルドの闇を払う。そして光をもたらした英雄王とカミの教えによる新しい時代の到来だと…
ロトの伝説は当時の教会が積極的に宣伝したために人々の記憶に多く残って、後世に伝えられたのだろう。真の勇者の称号・ロトが固有名詞のように伝わってしまったのもそのためだろう。
【まとめ・教会の歴史】
1.“上の世界”から教会の宣教師がアレフガルド上陸。
2.大魔王の時代にアレフガルドに広まる。
3.勇者ロト降臨。ロトをアレフガルドの新しい王にする計画も進める。
4.ロトはラルス王との王位争いに敗れ、姿を消す。
5.ラルス王による教会弾圧政策。
6.教会は海外に新天地を求める。ルプガナ、ムーンブルク、ぺルポイなど。
7.土着信仰のシドー教との勢力争いに勝ち、カミの教えは世界中に広まる。
8.竜王の時代以後、教会勢力はアレフガルドに帰還。
9.ラダトーム王行方不明に乗じ、教会が実権を握る。
10.ローレ王子、ラダトーム訪問。
この記事へのコメント
http://togege.at.webry.info/201211/article_1.html でのコメントも含め、上の世界は存在せず、暗黒時代を生きた人々の願望が生み出した幻想という説はとても面白いですね。その世界観だと、勇者ロトもまた同様に生まれた幻想なのかとも思います。勇者ロトやカミという存在を生み出した当時のアレフガルド人の心理とか考察すると面白いそうです。